学長の部屋|ブログ|― オンライン授業と対面授業の併用で考える

投稿者:西日本工業大学 第11代学長 片山憲一

 


 

■Vol.25 2020年9月16日更新

オンライン授業と対面授業の併用で考える

5月の連休明けに始まった前期授業は新型コロナウィルスの感染対策の遠隔授業の構築と運用で慌ただしく過ぎ去っていきました。教職員からは無事に遠隔授業を実施できたことの安堵の声や遠隔の方がうまくいった授業もあったなどという声も聞かれましたが、大学の対応に振り回されたのは他でもない学生たちです。京都情報大学院大学の土持ゲーリー法一教授は教育学術新聞の9月8日号に寄稿し「オンライン授業が教員から高い評価を受けていることと教育効率が良いことは別問題である」と指摘し「オンライン授業は授業で最も重要なフィードバックが欠如しており、教育の質の低下を危惧している」と述べています。

そこで本学では前期終了後に実施した教職員研修会で、オンライン授業で気づいた事例を各学科系から発表してもらいました。アンケート調査の結果画面が小さなスマホで授業を受けた学生の満足度が低かった事例や課題提出・試験の工夫などの報告があり、有意義な情報共有の場になりました。中でも感心したのは、遠隔授業は学生の目が疲れることに配慮して画面の背景や文字の色、大きさを工夫したという報告があったことです。改めて多様な視点で考えることの重要性を再認識しました。これらの報告を詳しく分析して現場にフィードバックし今後に生かしたいと考えています。

間もなく、後期授業が始まりますが、今期もウィズコロナでキャンパス内の学生数を定員の半数以下に抑えるため遠隔授業と対面授業との併用で進めます。現在先生方に遠隔授業導入後の教育ポートフォリオを作成してもらっていますが、今後、学生にも学修ポートフォリオを導入して授業デザインの見直しが出来ないかと考えています。各講義を遠隔か対面か二者択一で選択するのではなく、それぞれの良さを生かしたハイブリッド型で行うなどして学修成果を上げることが、学生や保護者の満足度を上げることにつながると考えています。

 


 

■Vol.24 2020年9月4日更新

Withコロナのデザイン

8月29日(土)朝6時半からRKB毎日放送「発掘ゼミ」で表題の番組が放映されました。本学情報デザイン学科の梶谷ゼミが「Withコロナ」の日常を自分ごととして、いかに楽しく過ごすかを形にしたプロセスを紹介した番組です。これまで「今までにない価値を創造し発信できる人材を育成するのが情報デザイン学科です」と説明しても何をやっているのか、なかなか伝えにくかったのですが、この番組では伝えたい内容の一端がうまく紹介されています。これまで経験したことがない「コロナ」という題材を使って、自分が楽しいか?快適か?などを判断基準に考えながら新しい日常の過ごし方を提案していく学生の生き生きした姿が印象的でした。

本学では工学とデザインの融合を掲げていますが、なかなか「その心は?」の部分が伝えにくかったのです。今回の放送で「With○○」というキーワードを使えばデザインの部分が明確になると感じました。それを形にするのが工学です。北九州市に本社があるTOTOの製品群に「融合」のいい事例があります。見た目のデザインだけでなく快適性や健康をキーワードにしてアクアオートや自動洗浄などの非接触技術が搭載された機種です。メジャーな例ではアップル社のiPhoneがあります。技術的に多機能を実現しただけでなくその洗練されたデザインや「自分ごと」の視点で設計されたタッチパネルやアプリは革新的でした。

日本は「With災害」列島です。本原稿を書いている今まさに、最強の台風10号が九州に近づいています。今や携帯電話はライフラインになっています。災害とどのように付き合っていくのかを考えたりするのも「工学とデザインの融合」の精神にピッタリです。

前例のない課題に対してこれまでとは違った多角的な視点から解決策を出すデザイン思考が出来る人材の育成。トライアンドエラーしながら大学一丸となって実現していこうと考えています。

 

紹介したテレビ番組はこちら

 


 

■Vol.23 2020年8月18日更新

文学って何だろう?

理工系の大学では、文章力をつけるために本を読むことは勧めていますが、意識してアクセスしないと「文学」に触れることはほとんどありません。海外では工学系の学生が第二専攻として創造性を育む文学を学ぶ例が多いと聞きました。そこで文学部ではどのようなことを学べるのか検索していると、元大阪大学文学部長金水敏氏の言葉に遭遇しました。「文学部の学問が本領を発揮するのは、人生の岐路に立ったときと考える。苦難に直面した時にその苦難を客観的に捉える事が出来る。その苦難から自由でいられる人間の人間として自由であるためには直面した問題を考え抜くしかない。その手がかりを与えてくれるのが文学」というもので、これまで思いもしなかった定義でとても腑に落ちました。

次にどのようにして本を読めば「文学」を体感できるか調べていて出会ったのが廣野由美子著「批評理論入門」(岩波新書)です。メアリー・シェリー著の怪奇小説「フランケンシュタイン」を読み解きながら小説の味わい方を解説した本です。これまで小説は面白いかどうかで判断していたのですが、読後は心の動きや時代背景なども意識して物語が立体的に見えるようになりました。これに味を占めて同著者の「ミステリーの人間学」(岩波新書)も続けて読みました。この本には読書を通じて直面した問題を考え抜く視点が示されていました。

何はともあれ、まずは皆さんに興味を持った本を手に取って欲しいのです。何を読めば良いか思いつかない人には地元の直木賞作家、葉室麟さんの小説を勧めます。少ない登場人物で地元が舞台になっている作品が多く、映画を見るように物語が進展するからです。例えば「秋月記」「無双の花」「銀漢の賦」「散り椿」などが手に取りやすいと思います。巣籠もり時間が増える中、「人生の岐路に立ったとき」に力を発揮するだけでなく、本の話で思わぬところで人間関係が繋がることもある文学に目を向けてみませんか。

 


 

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