先生インタビュー 松下 紘資
工学部 総合システム工学科 土木工学系
松下 紘資 准教授・博士(工学)
福岡県の京都郡みやこ町出身。小学生ではソフトボールチーム、中学高校ではサッカー部と体を動かすことが好きでした。
長崎大学では何となく都市計画に興味を持ち「社会開発工学科」を専攻。大学卒業後は日建工学株式会社に入社し、東京本社に3年間勤務した後、大阪技術部に14年間勤務。入社以来、消波ブロックの研究開発を担当しており、社会人になってから海岸工学を勉強しました。
2014年に京都大学で博士号を取得。地元で技術者を育てたいという思いから、2021年に地元福岡県に戻り西日本工業大学に勤務しています。
現在は、専門分野である消波構造物の研究をはじめ、サンゴ増殖技術やエネルギー分野の研究にも取り組んでいます。「土木」の魅力を発信するイベントなど活動にも力を入れています。
研究内容
日本の国土は消波構造物で護られている
高度成長期の「新設」から「更新・補強」の時代を迎えた 消波ブロックの評価・評定の明確化
高度経済成長期に多く設置された沿岸の消波構造物は50年から60年が経過しており、一般的なコンクリートの耐用年数を超えてきています。消波ブロックに関わらず、多くのコンクリート構造物も点検・補修・補強といった大規模なメンテナンスの時期を迎えていることは日本の喫緊の課題です。
ランダムに積み上げられた消波ブロックで形成された消波工の場合、大きな波が作用すると個々のブロックが飛散したり、ブロック同士が締め固まったりして消波工の断面が変化します。その結果、消波工を越波(えっぱ)する水量が大きくなり、背後地(陸地)に大きな被害が生じますので早急な対応が必要になりますが、どの程度断面が変化したら補修や補強を行えば良いのかという指標が必要です。そこで民間企業や他大学と共同で、実現象に則した断面変形に伴う空隙率変化を考慮した水理模型実験を実施して「消波工補修を行うべき指標」を示し、台風等によって被害を受けた際にどのくらい沈下したら補修・補強を行えば良いのか?の判断基準を、安定性能の低下という根拠に基づいて明確化しました。
今後は時代の趨勢に合った補強工法の開発が課題
研究により安定性能の低下という根拠に基づいた判断基準は生まれましたが、これに基づいて全国の消波構造物を同時に補修・補強するという訳にはいきません。この評価基準に基づいて限られた予算の中でライフサイクルコストが最適となる工法を選定して実施することが肝要となってきます。持続的な開発(Sustainable Development)という観点からも、低コストで必要な性能を長期に渡って発揮することができる新しい工法が必要です。
省資源化・省力化・低コストを目指した消波工補強工法の開発は、引き続き民間企業や他大学と共同で研究を進めており、50年後100年後の日本の安全・安心につなげるために日々取り組んでいます。